暮らしの作法

コンパクトな住まいに宿る、暮らしの質を高める工夫

① 人だけでなく、モノにも居場所が必要

家具と照明によって住まいの印象は大きく変わる

暮らしに身近な家具と照明は、間に合わせで揃えるのではなく、住まいと同じくらいに時間をかけ、末永く付き合える良質な製品を選ぶことをおすすめします。
ややもすると建物のデザインや仕上げだけに意識が向きがちですが、計画段階から予算の割り振りも視野に入れ、建物工事には含まれない置き家具やフロアランプ、テーブルランプ等もセットで住まいをイメージしてみてください。

アトリエかわしろでは、家具類も想定しながら設計を進めてゆくため、計画段階からアイデアを共有し、あたためておくとよいでしょう。
設計の各段階にはイメージ図を描いてお渡しします。たとえば、ラフでもよいので図面上に依頼者様ご自身でレイアウトを描いてみるのも楽しいと思います。前向きに取り組む方に、助言は惜しみません。

必ずしも家具や照明のすべてを新調する必要はなく、使い慣れたお手持ちのものをいくつか引き継ぎ、この機会に本当に必要なものは何かを再考してみる。
少々ハードルは上がりますが、ヴィンテージと呼ばれる中古品でも良いものはたくさんあります。あるいは、実際に出来上がった空間を体感した上で、ひとつずつ確認しながら、長いスパンで理想の我が家を育ててゆくのもよろしいかと存じます。

便利=豊かとは限らない。本当に必要なモノを選んでみる

どれだけ工夫をしてもスペースには限りがあるのですから、身の回りのモノは安易に増やさないよう、住まいのキャパシティを超えないための「見極め」が重要です。
この考え方は別に挙げた掃除のしやすさにも関係しますが、シンプルに床の上にはものを置かないよう、片付けられる状態をキープする。

おそらく、片付け上手な人は「これ以上増えるとまずい」という線引きができていて、片付く場所をあらかじめ逆算し、自己管理ができているのだろうと推察しています。
想定されるモノの居場所は、事前のヒアリングをもとに創意工夫し、設計に反映させていただきます。

その上で、人とモノとのバランスを上手にやりくりする身の丈に合った暮らしが、ひいては住み心地の良さにつながると考えています。

② コンパクトな住まいは、掃き掃除と拭き掃除が基本

室内の拭き掃除は中間期メインで継続

シンプルなプランでスペースにゆとりがある、床にものを置かない、あるいは移動が容易な小住宅は、「掃除もしやすい」という利点があります。
掃き掃除は、カーペットを敷かないのであれば箒ひとつで事足り、職人手づくりの良質なものを選べば二十年くらいは問題なく使えます。

しかも音が静かで電力も不要、軽量で収納場所にも困らず、所作も美しい。
拭き掃除は、床等の木部は昔ながらの水拭き(雑巾がけ)を推奨します。

上半身をまんべんなく使い、適度な運動になる上、中間期を中心に継続すると、時間の経過とともにしっとりとした艶が出て、建物に愛着がわきます。
天然素材に対しては、使用に伴うキズやシミも大らかに受け止めるくらいの意識で接してください。

身体に負担のかかる夏季や冬季は、無理してやらなくて構いません。
日常的な片付けが行き届いていれば、年末の大掃除など必要ないと思います。

キッチンや洗面所等の水回りは、使い終わったタイミングで手早く掃除する癖をつけることが最善です。
そうすれば、手荒れの心配がない中性洗剤だけで十分きれいになります。

浴室は使用後にさっとシャワーで流し、水気を拭き取れば問題なく、中間期に中性洗剤で汚れを落とす程度で快適に使用できます。
ガラス掃除は労力がかかるため、とりわけ窓の数や大きさについては、採光や通風、温熱環境を考慮し、吟味を重ねながら設計しています。

屋外は門掃きと水うちで清涼感を

外掃き専用の箒で、玄関土間から玄関先の道路までさらっと掃き掃除をする。これが「門掃き」です。
やりすぎは厳禁で、朝のルーティーンにすると軽い運動になり、朝食がおいしくいただけますし、京都の住宅地であれば、散歩中の方が普通に挨拶をしてくれます。

ご近所さんと連携できると街全体が綺麗になり、周囲への波及効果も期待できます。
門掃きからの流れで、埃が立たないよう水をうちます。こちらもささっと済ませるのがコツです。水浸しにする必要はなく、表面を湿らせる程度で十分。

ドラマでは手桶に柄杓で撒いているようですが、実際に見たことはありません。個人的にはじょうろを使っています。
意外に思われるかもしれませんが、門掃き・水うちは夏よりも冬の方が、得も言われぬ清涼感があり、気分が満たされます。

③ 成長する庭木を通して豊かさを分かち合う

身近な環境についてできること

誰も気にも留めない。
宅地も道路もすべて舗装で埋め尽くされると、本来大地に還るはずの雨水は側溝から河川へと流れ込んでしまいます。

木陰がなければ、中間期や夏の早朝に窓を開けて外気を取り込む気にもなれず、部屋じゅうを涼風が通り抜けることすら叶いません。
どこかでボタンを掛け違えた現実世界から目を背けるのは、何とも心苦しいものがあります。

少しでも環境のことを気にかけるのであれば、いくらかでも土を残し、ささやかながら植物が生育し、大地が呼吸できる住まいの提案くらいはできるかなと、考えている次第です。
たとえば三メートル四方の土のスペースがあれば、狭いながらも草木の育つ庭づくりが可能となります。

このくらいの大きさであれば、特に春先から夏頃までの間にかけて週一回程度の手入れと、年一回ほどの植木屋さんの剪定で維持でき、かなり現実的な選択肢です。
庭の役割は、季節の変化や植物の成長がもたらす視覚的な恩恵はもとより、肌で感じる調湿性といった、目に見えない心地よさも与えてくれます。

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