コンセプト アトリエかわしろの考え 設計者がやるべきこと。それは、身近な要素を見つめ直し、住まいにおける最適解を導き出すことであると考えています。まずは、4つのアイデアをご紹介します。 地形や周辺環境から建物の形状やアプローチを導き出す こちらは、福祉施設設計の際の例です。田園地帯という立地環境から、建物を主要道路からあえて引き気味に配置し、威圧感を和らげながら光が差し込む方向へと、直感的に誘う建物形状としています。実は主要道路に面する西側から冬季特有の冷たい卓越風が吹き付けるため、出入り口の位置を正面から外し、中央の中庭から通り抜けるようアプローチに変化を与えることで、日常生活に影響しないよう配慮したものです。古今東西の優れた建築を注意深く調べていくと、「土地の声に耳を傾けながら設計したのでは」と思わせてくれる事例に出会うことがあります。 室内外のつながりから空間のひろがりを導き出す こちらは、小住宅設計の例です。昨今のシンプルで無駄のない住まいから抜け落ちてしまった内と外との関係に向き合い、再構築してみました。住宅街という立地条件を活かして生活道路に面した小さな庭をつくる。ご近所と豊かさを共有するセミパブリックな空間です。高齢者の住まいであれば生活の異変に周囲が気付きやすく、それとなく目が届くことによる防犯効果も期待できます。さらに、プライバシーを重視した坪庭を建物に組み込み、要所に外部空間を織り込むことで、周囲の目を気にすることなく自然採光や自然通風を効率良く招き入れ、カーテンの必要がないストレスフリーな暮らしが可能となります。 生活動線から室と室との関係性を導き出す 限られた敷地、予算の中で居心地の良い住まいを実現するのであれば、とりわけ小住宅の場合、建具を極力省略したワンルームに近い空間が望ましいといえるでしょう。適度に視界を遮りながらプライバシーを確保する、よどみのない「一筆書き」のようなプランが理想です。そこで、廊下を介さず、室同士がつながって自由に行き来ができる住まいを考案してみました。計画のコツは、家事などの生活動線を整理し、行き止まりのない回遊性を確保すること。身体移動による空間の変化が、日々の家事仕事を通して、暮らしを健康で実りあるものにしてくれるのではと考えています。 身体機能の変化に寄り添うバリアフリー設計 廊下や建具を省略することで得られたゆとりのスペースを、車椅子や介助が可能なスペースへと置き換える。従来の施設的発想からの転換を試みています。バリアフリーといっても、そもそも生身の人間であれば正確な動きなどできるはずもなく、設計者の思惑通りにことが進むなんて普通はあり得ません。人間の誤差を許容するくらいのおおらかさが、住まいには必要なのではないでしょうか。加齢にともなう将来の不安を和らげ、気持ちのうえでの安心感に加え、ゆとりのスペースは掃除のしやすさといった恩恵にもあずかることが可能です。また、ゆるやかに室同士がつながるワンルーム空間は、暖房を工夫すれば冬季におけるヒートショックのリスクを抑制する効果が期待できます。